法務省HP掲載されている試験問題をもとに、簡単な解説を加えてゆきます。他の司法試験記事等もご覧ください。
平成30年の憲法については、これまでの出題スタイルを踏襲せず、相談を受けた弁護士の立場からアドバイスをするというものでした。
この問いでは、成人向け雑誌の販売等を規制しようとする架空の条例案について、憲法上の問題点を指摘しなければなりません(以下では簡略化して記述している所があります。)。
①問題文中のやりとりで、刑法175条の「わいせつ」に当たらなくても規制するということと、規制対象の範囲について議論があるということが書かれています。そうすると、判例百選にも載っている徳島市公安条例事件(最大判昭50.9.10)を念頭に置いて、条例案7条の「性交又は性交類似行為」「衣服の全部又は一部を着けない者の卑わいな姿態」について、合憲限定解釈の議論に触れておくことになるでしょう。
②条例案15条1号では、条例に違反して販売をした者に「6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金」を規定し、更に条例案16条では、両罰規定まで設けています。これらは、規制態様として過剰だという議論にも使えますが、いったん規制態様の議論とは別に、法律による授権が相当程度に具体的に限定されていればよいという判例(最判昭37.5.30)の立場に一言だけ触れておくとよさそうです。
③規制図書を販売する店舗側の憲法上の権利を検討します。憲法22条1項には「職業選択の自由」としか規定されていませんが、どの基本書にも書かれているとおり、営業の自由が保障されるという論述をコンパクトに展開し、店舗で規制図書を販売する自由が保障されるというように具体的な記述が必要です(最大判昭47.11.22)。薬事法事件(最大判昭50.4.30)を意識すると加点されそうです。
④規制図書を購入する側の憲法上の権利を検討することになります。憲法21条1項は「表現の自由」としか規定されていませんが、表現物を受け取る自由が保障されるという論述をコンパクトに展開して、店舗で規制図書を購入する自由が保障されるということを示しましょう。岐阜県青少年保護育成条例事件(最判平元.9.19)を意識すると加点されそうです。
⑤今年の問題で厄介だったのは、条例案8条との関係で、2時間という限られた時間の中で、(1)18歳未満の購入者、(2)18歳以上の購入者//(3)コンビニ店(条例案8条1項)、(4)規制区域店(条例案8条2項)、(5)レンタル店(条例案8条3項・4項)の5パターンのあてはめ作業が必要であった点にあります。通常であれば憲法の論文式問題では、権利の保障→権利の制約の認定→その制約が正当か否かについての判断枠組みを定立→あてはめ→合憲or違憲というステップを踏みます。本問のように、一方では憲法21条1項の権利が、他方では憲法22条1項の権利が同時に問題となっていますので、比較衡量の形をとって論じるのも一手ではないでしょうか。制限が必要とされる程度と、誓願される自由の内容及び性質、これに加えられる具体的制限の態様及び程度等を較量するというものです(最判平5.3.16)。
以上です。随時更新していきます。他の司法試験記事等もご覧ください。ゴンテ