平成30年司法試験-国際私法第1問の分析-
こんにちは。ゴンテです。「出題趣旨」を追記して、平成30年司法試験の国際私法第1問をまとめてみます。
【事案の整理】
①A男(日本国籍)とB女(甲国籍)の離婚に際して、A男はAB間の嫡出子C(日本国籍)の親権者となった。
②A男とD女(甲国籍)は婚姻して、A男・D女・子Cは日本で生活していた。
③D女は事故死したが、D女が所有していた不動産が日本にある。
【設問1】
出題趣旨より引用→“先ずは主たる問題である相続問題を解決する準拠法を決定し,そしてそれを適用した結果,被相続人Dに子がいるか否かが問題になることを明らかにしなければならない。”“親子関係の成否…が相続とは異なる単位法律関係であることを示し,その準拠法を改めて決定する必要があることを説明しなければならない。”“新たな準拠法決定については,…法廷地国際私法説を傍論ながら明確に採用した最高裁判決…には言及すべきである。”“本問では,…再婚による親子関係の成否が問われているところ,法廷地の国際私法にも…甲国の国際私法にも,…直接規律する条文は存在しない。”“前記最高裁判決は,…出生以外の事由により嫡出性を取得する場合の嫡出親子関係の成立については,通則法第28条…を類推適用して,これを判断している。”←引用以上
→D女を被相続人とする遺産分割の前提として、D女と子Cの間に親子関係があるか?が問われている。
→相続について規定する通則法36条を経由して、被相続人の本国法である甲国法の甲国民法⑥を見ると、嫡出子は相続人になる旨が規定されている。そこで、子Cは、D女の嫡出子なのかが問題となる。
→先決問題の処理について、判例・通説の法廷地国際私法説に立つことに触れた上で、国際私法の解釈問題として、嫡出親子関係の成立に法性決定されることを示す。
→通則法28条は出生を前提にしており、同30条は準正を前提にしているので、通則法に明文規定を欠いているが、子の利益の観点から通則法28条を類推適用する立場をとる。
→通則法28条1項は、なるべく嫡出親子関係を認めるべく選択的連結をとっており、「夫婦の一方の本国法で子の出生の当時におけるもの」が準拠法となる。
→D女の本国法は、甲国法。甲国民法④「親が再婚した場合,前婚の子は,後婚の嫡出子としての法的地位を取得する。」とあるので、問題文の事情をあてはめる。
→DC間に嫡出親子関係が成立する。ちなみに、大手予備校の辰已法律研究所の解答速報では、通則法42条の公序についても検討するように記載されていたようだが、この設問では、検討不要だと考えています。
【設問2】
出題趣旨より引用→“時間的な法の抵触…を解決する法規が時際法である。”“AとDが再婚した当時にはその再婚によりDC間に親子関係が成立するとする法律が存在していたのに対して,Dが死亡した時にはその条文が廃止され…それまで成立していた親子関係がこの改正により遡って廃止されるという経過措置が,甲国内でとられていた…場合,日本の裁判所は,新法と旧法のいずれを適用すべきか…が問われている…。”“通説…によれば,…時際法は,場所的な法の抵触を解決する国際私法とは性質を異にし,…準拠法国内の問題であるとされ…新法と旧法のいずれを適用するかは甲国の国内法上の問題と考え,改正時の甲国の経過規定によって決せされる…。”←引用以上
→子CはD女の相続人になるか?が問われている。
→通則法36条の「相続」に法性決定され、被相続人の本国法が準拠法となる。
→「被相続人」D女の本国法は甲国法。甲国民法⑥「嫡出子…は,第1順位の相続人である。」とあるものの、この設問では、甲国民法⑤が廃止され、かつ、甲国民法⑤によって発生した親族関係が消滅するという法改正がなされたという設定になっている。法改正がなされた場合に、旧法が適用されるのか、新法が適用されるのかは、その国の経過規定に従うという通説に立って論述する。
→今回の改正内容からは、D女-C子間の親子関係は消滅する。
→通則法42条の公序を検討する。公序条項については、適用結果の異常性と内国関連性の相関によって検討していき、本問では、嫡出子という重要な地位を法改正によって一方的に奪うことになっており、適用結果の異常性が認められる。また、子Cは日本人であって相続財産も日本に所在しているため、内国関連性も認められ、公序に反すると認められる。
→本問では、甲国の法改正部分の適用が排除されるとし、結果としては、甲国民法⑥を根拠として、C子はD女の相続人になる(?)。
【設問3】
出題趣旨より引用→“相続人が他の共同相続人の同意を得ることなくその持ち分を売却した行為の有効性が問われている。…この問題をいかなる単位法律関係の問題と考えるか…も,最高裁判決…への言及が求められる。この最高裁判決は,…相続の問題と法性決定しながら,「取引の安全」という考え方を持ち出して,…日本法を適用してその有効性を認めている。”←引用以上
→D女の遺産である日本所在の不動産を子Cが独断でE社に売却しているが、この売買契約は有効か?が問われている。
→相続財産の性質については通則法36条の相続に法性決定され、処分の効力については通則法13条2項の物権の得喪に法性決定されると思います。
→被相続人の本国法たる甲国民法⑦「遺産分割前の相続財産は,共同相続人の合有」になります。また、持分の処分については「原因となる事実が完成した当時における目的物の所在地法」たる日本民法で判断することになります。
→民法の立場からは、子CがE社に対して本件不動産を売却したことは、有効となりますので、売買契約の無効だという子Cの主張は認められない(?)。
以上になります。国際私法第2問や他の科目は、別の記事をご覧ください。ゴンテ