平成30年司法試験-短答式民法の分析と解説-第11問~第20問編
こんにちは。ゴンテです。法務省のHPで正式な解答が発表されましたので、平成30年司法試験短答式民法のうち、第11問目から第20問目までの選択肢ごとに簡単な解説を加えようと思います。
【第11問】正答2
ア.(×)立木に明認法法を施して存続している場合には、土地とは別個に所有権を対抗できます(大判大10.4.14)。
イ.(○)建物建築請負と所有権の帰趨についての典型的な問題です。Bが時価400万円相当まで建築して工事を中止してしまった後、Cが自ら材料を提供して時価900万円相当の建物を完成させた場合、特約のない限り、代金未了の段階では建物所有権はCに帰属します。
ウ.(○)「付合した動産について主従の区別をすることができないときは…付合の時における価格の割合に応じて…共有する。」(民法244条)。
エ.(×)建物賃借人が建物所有者の同意を得て増築した場合、取引上の独立性がなければ、増築部分の所有権は建物所有者に帰属します。
オ.(○)液体甲と液体乙が混和した場合には、所有権を失った者に償金を支払うことで調整することになる(民法248条、245条、703条、704条)。
【第12問】正答4
ア.(×)留置権者は、留置物の一部を債務者に引き渡した場合であっても、特段の事情のない限り、留置物の残部について留置権を行使できる(民法296条、最判平3.7.16)。
イ.(×)AがBに対して動産売買先取特権を有しているところ、BがCに対して当該動産を売却して占有改定による引渡しをした場合、先取特権が行使できなくなる(民法321条、最判昭62.11.10)
ウ.(○)動産質権の設定において、指図による占有移転によって目的物を債権者に引き渡すことによっても有効と考えられている(民法344条)。
エ.(○)不動産質権においては質権者は原則として当該不動産を使用収益できるが、特約によって、使用収益できないとすることも可能である(民法359条、356条)。
オ.(×)抵当権者は、目的物が第三者に不法占有されることで交換価値の実現が妨げられ、優先弁済請求権の行使が困難になるような状態のときは、抵当権に基づく妨害排除請求権として、不法占有を排除することができる(最大判平11.11.24)。抵当不動産所有者において目的物の侵害が生じないように維持管理することが期待できない場合には、占有者に対して、直接自己への明け渡しを求めることができる(最判平17.3.10)。
【第13問】正答4
ア.(○)抵当不動産の所有者から地上権を買い受けた第三者は、抵当権者に代価を弁済したときは、抵当権はその第三者のために消滅する。
イ.(○)「主たる債務者…の承継人は、抵当権消滅請求をすることができない。」(民法380条)。←明文規定があります。
ウ.(×)「登記をした賃貸借は、その登記前に登記をした抵当権を有するすべての者が同意をし、かつ、その同意の登記があるときは、その同意をした抵当権者に対抗することができる。」(民法387条1項)←明文規定があります。とにかく、登記・登記・登記!です。
エ.(○)抵当不動産の所有者から買い受けた者が必要費を支出し、抵当権の実行により競売がされたときは、その代価から優先的に償還を受けることができる。←必要費については、抵当権者にとっても有益だからですね。
オ.(×)「抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である建物の使用又は収益をする者…」(民法395条1項)。→問題文では「土地を使用収益する者」となっていますので、引っかけ問題です。
【第14問】正答3 本問は、法定地上権(民法388条)の問題です。効果:地上権が設定されたものとみなされる。要件:①抵当権設定時に土地上に建物が存在すること、②土地建物が同一の所有者であること、③土地建物の一方または双方に抵当権が設定されたこと、④土地建物の所有者が競売により異なったこと
ア.(×)問題文1行目までは、①ないし③の要件を充たしていたが、乙建物が取り壊されたことで、①の要件を充たしていない。よって、法定地上権は成立しない。
イ.(○)問題文1行目から、①の要件を充たしていない。よって、法定地上権は成立しない。
ウ.(○)問題文1行目から、②の要件を充たしていない。よって、法定地上権は成立しない。
エ.(×)問題文全文から、①ないし④の要件を全て充たす。よって、法定地上権は成立する。なお、最判昭48.9.18(民集27-8-1066)所有権登記と実際の所有者の一致までは求められていない。
オ.(×)要件を全て充たしそうだが、問題文1行目から、要件➁が問題となり、最判昭29.12.23(民集8-12-2235)共有地に地上権を設定するには共有者全員の同意を要するので、➁を充たさない。よって、法定地上権は成立しない。建物が建っている限りそれが土地を占有し続けるという性質上、共有者が持分権をいわれもなく侵害されるという不都合に着目して考える。
【第15問】正答2
ア.(×)「元本の確定前においては、債務者の変更(をすることができる)。」(民法398条の4第1項)。「(債務者)の変更をするには、後順位の抵当権者…の承諾を得ることを要しない。」(同2項)。→明文規定があります。
イ.(○)根抵当権者は、元本確定期日の定めがない場合、いつでも担保すべき元本の確定を請求できる。
ウ.(○)根抵当権者は、根抵当権を実行して競売手続をとった場合、極度額の範囲で配当を受けることになります。それが、根抵当権です。
エ.(×)「根抵当権の極度額の変更は、利害関係を有する者の承諾を得なければ、することができない。」(民法398条の5)。
オ.(○)問題文は条文の文言そのままです(民法398条の21第1項)。
【第16問】正答4
ア.(×)「債権は、金銭に見積もることができないものであっても、その目的とすることができる。」(民法399条)。
イ.(×)「外国の通貨で債権額を指定したときは、債務者は、履行地における為替相場により、日本の通貨で弁済をすることができる。」(民法403条)。
ウ.(○)元本債権と利息債権は別物です。
エ.(○)制限種類債権は、種類債権ではあるが、範囲が制限・限定されている債権である。米は種類物だから履行不能とならないが、甲倉庫内の米1tは、制限種類物であるので、倉庫内の米がすべて滅失すれば、履行不能となる。
オ.(×)「債権の目的が…選択によって定まるときは、その選択権は、債務者に属する。」(民法406条)。
【第17問】正答4
ア.(×)相続の放棄は、詐害行為取消権の対象とならない(最判昭49.9.20)。現在の財産が減少するわけでもなく、身分行為を他人が強制するのは相当でない。
イ.(×)詐害行為取消権の趣旨は、債務者の責任財産の保全にあります。
ウ.(○)債権者代位権と異なり、詐害行為取消権の場合は、とにかく取り消して元に戻すというのが原則です。
エ.(×)「転得者が…転得の時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、(取消しを裁判所に請求できない)。」(民法424条1項)。
オ.(○)確定日付のある債権譲渡の通知そのものは、詐害行為取消権の対象とならない(最判平10.6.12)
【第18問】正答4
ア.(○)保証が付された債権の譲渡人から主債務者に対して債権譲渡の通知をすれば、譲受人は保証人に対して保証債務の履行を請求できる。債権譲渡の通知の趣旨は、主債務者が登記所のような役割をすることにあります。これを押さえておけば、この選択肢はミスらない。
イ.(○)そのとおり。詳しい知識がなくとも、保証人がここまで知っていたのであれば、この選択肢が○になることは、当てが付きます。
ウ.(×)検索の抗弁(民法453条)。まずは、主債務者の有する債権から先に弁済に充ててもらいうる。
エ.(×)「保証人は、その保証債務についてのみ、違約金又は損害賠償の額を約定することができる。」(民法447条2項)。
オ.(○)特定物売買の売主の保証人は、特約のない限り、売主の債務不履行により契約が解除された場合に、原状回復義務である既払代金の返還義務についても保証責任がある(民法447条1項、最大判昭40.6.30)
【第19問】正答5
ア.(×)
イ.(×)「…弁済を受領する権限を有しない者に対してした弁済は、債権者がこれによって利益を受けた限度においてのみ、その効力を有する。」(民法479条)。
ウ.(○)
エ.(○)
オ.(×)ATMによる預金の払戻しにつき、可能な限度で無権限者による払戻しを排除し得るように注意義務を尽くしていたことを要する(民法478条、最判平15.4.8)。
【第20問】正答3
ア.(×)「債務者が弁済の受領を拒み…弁済をすることができる者は…供託してその債務を免れることができる。」(民法494条)。
イ.(○)債権者があらかじめ受領を拒んでも、原則として、債権者は口頭の提供をしてからでなければ供託できない(大判大10.4.30)。
ウ.(○)「弁済者が過失なく債権者を確知することができないときも、(供託してその債務を免れることができる)。」(民法494条、判例)。
エ.(×)供託の効果は、債務の消滅である。
オ.(×)(最判昭42.8.24)
以上です。他の記事もご覧ください。ゴンテ
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某国立大学法学部の学生です。大学の講義で使用するので、平成30年度司法試験短答式問題民法第14問の解説が知りたいです。
法定地上権の問題を更新しました。