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平成30年司法試験-論文式試験民事系第1問(民法)の分析と解説-設問2編

 
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今年の各設問の配点割合は、40:35:25です。5枚で書く場合は、2枚:1.8枚:1.2枚の配分になります。

設問2←土地所有権に基づく妨害排除請求が認められるかが問われています。

(1)所有権に基づく妨害排除請求の根拠条文は、民法206条・202条1項・198条となります。この設問の元ネタは、最判平21.3.10だと思います。最初に、事実を整理します。

(2)「問題文10~14段落」→売主Dは、買主Aに対し、平成27年11月9日、甲トラックを代金300万円で売却しています(民法555条)。この売買契約には、所有権留保特約が付されています。買主Aは、この日のうちに甲トラックの引渡しを受けており、契約に従って毎月4万円ずつ代金の振込みが欠かさず行われている状態です。代金が完済されていない段階の平成30年2月20日、丙土地所有者Eは、その土地上に甲トラックが放置されているのを発見したため、ナンバーを照会したところ甲トラックの登録名義人がDであることを突き止めました。そこで、Eは、Dに対して、甲トラックの撤去を求めています。

(3)以上の事実がある中で、丙土地所有権者Eから甲トラック留保所有権者Dに対する妨害排除請求が認められるのでしょうか。甲トラックの処分権限の帰属が問題となります。DA間の売買契約を見てみると、代金完済までは買主Aが善管注意義務を負っているものの、代金支払いが滞ることがない限り、甲トラックの利用は専ら買主Aが自由に行うことができるといえます。現段階でも買主Aは、代金支払いを毎月欠かしていませんから、甲トラックの処分権限は買主Aに帰属していると考えられます。

(4)このように考えていくと、D:「私は甲トラックを撤去すべき立場にない。」という発言は、正当であるという結論になります。では、Eの妨害排除請求は、認められないのでしょうか。問題文に道路運送車両法5条1項が記載されており、登録自動車の所有権の対抗問題について論じなければならないことが分かります。

(5)最判平6.2.8の射程が特に問題となります。建物所有者が建物を所有することで土地を占有しているが登記を経ていない場合、建物登記名義人は、建物を他者に譲渡して所有権を喪失したと主張して、建物収去土地明渡の義務を免れることができない旨の判示をしています。設問の事例では、留保所有権者Dは、甲トラックという動産を所有しているものの、ただちに土地を占有していることにはならないですし、所有権留保特約付き売買契約によって名義を保持しているという正当な理由も有していると考えられます。そうすると、原則として、Aが甲トラックの撤去義務を有しているが、特段の事情がある例外的な場合にはDが撤去義務を免れることができないというように検討しました。

(6)設問の事例では、「問題文12・14段落」から、Aが居住していた借家を引き払う際に、誰にも転居先を告げていないこと・DはAの所在を知らないこと・EもAの所在を把握できていないこと、が記載されています。このような状況下では、特段の事情があると認めてよいと思います。Eとしては、赤の他人であるAの所在を探し続けなければならないというのは酷ですし、動産の撤去は比較的容易であって、Dが負担した撤去費用を後にDがAに求償することも可能です。

(7)結論としては、丙土地所有権者Eの甲トラック留保所有権者Dに対する甲トラックの撤去請求は認められるということになります。

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