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平成30年司法試験-短答式憲法の分析と解説-第1問~第10問編

 
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法務省HPに正式な解答が掲載されましたので、各選択肢ごとの簡単な解説を加えようと思います。他の記事も是非ご覧ください。

【第1問】正答2-1-1

ア.(×)「およそ政治的行為は…憲法21条による保障を受ける。…公務員の政治的中立性を損なうおそれのある公務員の政治的行為を禁止することは,それが合理的で必要やむをえない限度にとどまるものである限り,憲法の許容するところである。」(最大判昭49.11.6)←公務員である被告人が組合活動として選挙ポスターの掲示や配布をした猿払事件です。→公務員にも憲法の人権保障が及ぶけれども、制限することが許されるケースであると判断されています。

イ.(○)「…意見表明そのものの制約をねらいとしてではなく,その行動のもたらす弊害の防止をねらいとして禁止するときは,同時にそれにより意見表明の自由が制約されることにはなるが,それは,単に行動の禁止に伴う限度での間接的,付随的な制約に過ぎず」と同判決で示しています。

ウ.(○)「政治的行為とは,公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが,観念的なものにとどまらず,現実的に起こり得るものとして実質的に認められるもの」とし、おそれの有無は、「当該公務員の地位,その職務の内容や権限等,当該公務員がした行為の性質,態様,目的,内容等の諸般の事情を総合して判断する」と判示しています(最決平24.12.7)。

【第2問】正答3

ア.(○)「子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ばすことは許されず,子を個人として尊重し,その権利を保障すべきであるという考えが確立され」(最大決平25.9.4)。→自らの力ではどうすることもできない事情というのが平等を論じるときの鍵を握っています。

イ.(×)憲法14条1項の「人種、信条、性別、社会的身分又は門地」というのは、限定列挙ではく、特に差別的取扱がなされやすい事項についての例示列挙です。

ウ.(○)憲法が各地方自治体の条例制定権を認める以上、それぞれが条例を制定した結果、地域ごとに売春の取締りについて差が生ずることがあっても違憲とはいえない旨の判示をしています(最大判昭33.10.15)。長野県だけ唯一、青少年保護育成条例がなかったのですが、遂に条例が制定されたということがニュースになっていました。

【第3問】正答5

ア.(×)「…(謝罪広告)を強制することが債務者の人格を無視し著しくその名誉を毀損し意思決定の自由乃至良心の自由を不当に制限することとなり、…単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明するに止まる程度のものにあつては、これが強制執行も代替作為として民訴七三三条の手続によることを得る…」(最大判昭和31.7.4)。→強制的な謝罪広告の掲載は、良心の自由を不当に侵害することになろうけれども、単なる陳謝程度であれば憲法上、許容されるということか。

イ.(○)(最判平14.4.25)→支援目的の範囲内か、協力義務の範囲内かを検討。結論は、合憲。

ウ.(○)(最決平2.9.28)

【第4問】正答2-1-1

ア.(×)(最判平12.2.29)→自己の宗教上の信念に基づいて、輸血を拒否する意思決定をする権利は、人格権の一内容として尊重されなければならない。

イ.(○)(最判平8.3.8)→単なるサボりではく、信仰上の真摯で正当な理由に基づいて剣道受講を拒否したケースで、代替措置が可能であるのにそれを検討せずに、留年させ更に退学させたのは裁量権の範囲を超える違法なものと判示した。

ウ.(○)(最決平8.1.30)→宗教法人の解散命令制度は、世俗的目的に出たものであるとした上で、その解散は宗教上の行為に支障が生じうるから、宗教法人の解散等の法的規制の許容性については慎重に検討するという姿勢を示している。

【第5問】正答1-2-1-1 ここは法律知識不要の問題です。

ア.(○)そのとおりですね。

イ.(×)反対説の根拠ですね。水掛け論の真偽を一般人が判断することは難しいです。

ウ.(○)そのとおりですね。

エ.(○)そのとおりですね。

【第6問】正答2-2-2

ア.(×)(最判平7.3.7)←泉佐野市民会館事件です。公民館は予約するなどして原則として誰でも利用できますが、限られた例外的な場合には利用を拒否できる場所です。どのような場合に例外に当たるのかを判示した重要判例です。ちなみに、現在この会館は取り壊されて残っていません。

イ.(×)(最判昭35.3.3)→一般公道は誰でも通行することができる場所ですが、通行以外で好き勝手に使用できません。

ウ.(×)(最大判昭28.12.23)→公園は誰でも本来の利用方法の範囲で利用できる場所です。公園と公民館の違いを整理しましょう。

【第7問】正答7

ア.(×)(最大判昭38.5.22)←東大ポポロ事件です。→学生の集会は学問の自由と大学の自治の範囲において認められるものにすぎず、それが真に学問的な研究又はその結果の発表のためのものではなく、実社会の政治的社会的活動に当たる場合には、大学の有する特別の学問の自由と自治は享有しない。と判示しています。

イ.(×)(最大判昭51.5.21)←旭川学テ事件です。→大学においては教授の自由が認められますが、高校以下においては限定された教授の自由にとどまります。そもそも憲法23条は、最高学府たる大学で学問を究めたり、そこで国家権力による干渉を受けないことを狙いとした条文です。

ウ.(○)同判決において、親が有している子の教育の自由は、主として家庭教育等学校以外における教育や学校選択の自由に表れるものである旨を判示しています。

【第8問】正答5

ア.(○)自衛官は職務の性質上、1秒でも早く基地に集合しなければなりませんので、居住地の制限はやむを得ません。

イ.(×)(最大決昭33.9.10)←帆足計事件です。パスポートがなければ外国に渡航できませんもの。

ウ.(○)転出転入届を提出させることは、居住移転の自由を制限するものではありませんし、誰がどこに住んでいるかも分からなければ、市民税等の管理・投票所入場券の発送・防災計画などにも影響します。

エ.(×)居住移転の自由に対する制約は、期間限定であってもありますよ。

【第9問】正答1-2-2-2

ア.(○)そのとおりですね。

イ.(×)自衛官や警察官のように武装した実力組織に団結権が認められないのは当然です。危険すぎます…。

ウ.(×)選択肢の文言のうち「職務の公共性は考慮されるべきではない」という部分が間違っています。

エ.(×)憲法が直接適用される条文は限られているものの存在します。15条4項(秘密投票の保障)、18条(奴隷的拘束及び苦役からの自由)、24条(家族生活における個人の尊厳と両性の平等)、27条3項(児童酷使の禁止)、28条(労働者の団結権)です。数少ないので覚えておきましょう。

【第10問】正答5

ア.(×)婚姻に関する法制度の憲法24条の適合性は、制度趣旨・制度から生ずる影響・24条に照らした合理性等を考慮して、国会の立法裁量の範囲を超えると見ざるを得ない場合に当たるか否かで判断します。(最大判平27.12.16)。

イ.(○)同判決より。

ウ.(○)同判決より。

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