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平成30年司法試験-短答式民法の分析と解説-第21問~第30問編

 
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法務省のHPで正式な解答が公表されましたので、各選択肢ごとに簡単な解説を加えようと思います。

【第21問】正答3

ア.(×)「二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。」(民法505条1項本文)。

イ.(○)弁済期にある自働債権と弁済期の定めのある受働債権とが相殺適状にあるというためには、受働債権につき期限の利益を放棄するなどして、その弁済期が現実に到来していることを要する(最判平25.2.28)。という判例があります。

ウ.(○)消滅時効が完成している債権の譲受人が、これを自働債権として相殺することはできない。(最判昭36.4.14)。

エ.(×)双方の過失による同一の交通事故によって物損が生じた場合であっても、相殺することはできない。(最判昭32.4.30)。←薬代は現金でという言葉を聞いたことがあると思いますが、物損の場合にも相殺できません。

オ.(×)預金者でない第三者を銀行が預金者本人と誤信して、定期預金を担保に貸付を行った場合、本人確認について金融機関としての注意義務を尽くしていたときは、民法478条類推適用の場面となります。銀行は貸付債権と定期預金債権を相殺できます。(最判昭59.2.23)。

【第22問】正答4

ア.(×)「債権者が債務者に対して債務を免除する意思を表示したときは、その債権は、消滅する。」(民法519条)。←債権者の意思表示だけでよいのですね。

イ.(×)「債務の弁済として給付をした者は、その時において債務の存在しないことを知っていたときは、その給付したものの返還を請求することができない。」(民法705条)。

ウ.(○)変わらず300万円の連帯債務を負うことになります。

エ.(×)「連帯債務者の一人が連帯の免除を得た場合において、他の連帯債務者の中に弁済をする資力のないものがあるときは、債権者は、その資力のない者が弁済をすることができない部分のうち連帯の免除を得た者が負担すべき部分を負担する。」(民法445条)。

オ.(○)保証債務の付従性ですね。

【第23問】正答1

ア.(×)現行民法の基本は諾成契約です。要式契約は保証契約のときですね。もっとも、現実社会では契約書が交わされますが。

イ.(○)金銭消費貸借契約は、要物契約です。金銭は借主に交付せずとも、借主が指定した第三者に交付することによっても有効となります。金銭の交付があったことが重要なのであって、わざわざ借主を経由させるのは迂遠です。

ウ.(×)利息については特約を結んでいることが必要です。(新民法589条1項)。←改正法で明文規定が新設されます。

エ.(○)利息の支払いがある場合、利息は元本利用の対価ですから、元本を受け取った初日からの利息を支払う義務があります(最判昭33.6.6)。

オ.(○)持参債務が原則です(民法484条)。

【第24問】正答4

ア.(×)使用貸借はタダで貸してあげるわけですから、瑕疵担保責任を負わないのが原則です(民法596条、551条)。←贈与契約でも原則瑕疵担保責任を負わないとする条文が準用されています。

イ.(×)内縁夫婦の一方が死亡した場合には、残された他方に相続権はありませんが、長年一緒に住んでいた住居については、遺産分割が終了するまでの一定期間、使用貸借に基づいて占有してよいという苦肉の救済策です。判例があります→(最判平8.12.17)。

ウ.(○)「使用貸借は、当事者の一方が無償で使用及び収益をした後に返還をすることを約して相手方からある物を受け取ることによって、その効力を生ずる。」(民法593条)。使用貸借契約は、要物契約ですので、当該建物の引渡しを受けなければ、有効となりません。法学初学者の時には、これが理解できなかったのを思い出しました。

エ.(○)条文操作が必要な問題です。(民法595条2項、583条2項、196条2項)←これが根拠条文です。

オ.(×)「借主は、貸主の承諾を得なければ、第三者に借用物の使用又は収益をさせることができない。」(民法594条2項)。借主が無断で第三者に借用物を使用収益させていたときは、貸主は、契約解除することができる。(同条3項)。→常識的に考えればそりゃそうですよね。その人を信頼してタダで貸してあげてるのに、勝手に赤の他人が使ってたら誰だって怒りますよ。

【第25問】正答3 A→B賃貸、B→C転貸、の典型的な問題です。

ア.(×)AB間の賃貸借契約と、BC間の賃貸借契約は、別個の契約です。AはBから賃料の支払いを受けることになります。

イ.(○)同じく、Cの賃貸人はBなのですから、CはBに修繕依頼をすることになります。

ウ.(×)Aが転貸を承諾している場合、AB間の賃貸借をいつでも合意解除してよいと解釈してしまったならば、Cの立場が不安定すぎます…。それは、可哀想すぎです。(判例)。

エ.(○)AB間の賃貸借契約は、当事者間で相対的に債権が生じるに過ぎません。しかし、Aの建物所有権は物権であり、絶対的排他的な性質がありますので、Aは誰に対しても甲建物所有権に基づいて明渡請求できます。

オ.(×)いわゆる信頼関係破壊の法理の問題です。無断転貸があったことのみでは、賃貸借契約を解除できません。(判例)。立証責任について補足すると、賃借人側が信頼関係を破壊するに至らない特別の事情があることを主張立証することになります。

【第26問】正答4

ア.(×)「受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。」(民法644条)。←会社法の問題を解くときにも毎回と言っていいほどこの条文を引くことになりますよね。

イ.(×)委任というのはその人を信頼してお任せするという場面ですから、勝手に第三者に委託されては困ります。「委任者の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ」なりません。(新民法644条の2第1項)。

ウ.(○)「…その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。」(民法650条1項)。

エ.(○)委任は、「受任者が後見開始の審判を受けたこと。」(民法653条3号)によって終了します。代理権の消滅の場合と同様に、判断能力が無くなってしまった人に法律行為をお任せすることはできませんからね。当然の結果です。

オ.(×)「委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。」(民法651条1項)。

【第27問】正答2

ア.(×)和解において、係争物に関係のない物の給付を約することもできる。(民法695条、最判昭27.2.8)。和解のメリットは、柔軟に紛争を解決できるところにあります。

イ.(○)和解の前提や基礎に錯誤がある場合には、錯誤無効の主張ができます。(判例)。

ウ.(○)賭博という違法な行為についての和解契約は無効です。(民法90条)。

エ.(○)和解契約締結時に予期し得なかった事情が生じた場合には、新たに損害賠償請求できます。(最判昭43.3.15)。

オ.(×)和解契約に基づいて解除権が生じていますが、それを行使できるか否かは別途、信頼関係破壊の法理によって判断されます。解除権の発生と解除権の行使は別々に考える必要があります。←これも法学初学者の時によく分からなかったです。

【第28問】正答1

ア.(○)修理費用は請求できますが、修理に対する報酬までは請求できないということです。(民法702条1項)→引っかけ問題です。やられました…。

イ.(×)委任の規定が準用されています(民法702条2項、650条2項)。読み替えると、→「管理者は、事務管理をするのに必要と認められる債務を負担したときは、本人に対し、自己に代わってその弁済をすることを請求することができる。」となります。

ウ.(○)「ただし、事務管理の継続が本人の意思に反し、…が明らかであるときは、この限りでない。」(民法700条但書)。本人の意思に反しているなら、もうやるなよということですね。

エ.(×)管理者は前がん注意義務を負っています(民法698条反対解釈)。今回は、生け垣を途中で放置していますので、重大な過失があるといえますから、損害賠償責任を負うことになります。

オ.(×)共有者各自の負担に帰すべき費用について、事務管理が成立しうるとした判例。(大判大8.6.26)。

【第29問】正答4

ア.(×)(判例)比較的最近出た判例ですね。認知症の夫が線路に入って轢死してしまった事案で、老老介護していた妻にどのような責任が生ずるのかについて判示しました。

イ.(○)そのとおりです。もし貴方が大工さんに全部お任せで建物を建ててもらう場合に、大工さんが誰かを怪我させたとして、貴方が責任を負うなんて変な話ですよね。常識的に考えれば分かる選択肢です。

ウ.(×)逆です。「…その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。」(民法717条1項)。必ずどちらかが損賠賠償責任を負います。

エ.(○)「ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、この限りでない。」(民法718条1項)。

オ.(×)交通事故加害者と、被害者の搬送先の医師は、共同不法行為として不真正連帯債務を負うことがあります。

【第30問】正答4

ア.(×)嫡出否認の訴えは、嫡出推定が及ぶ子に対して夫が提起することができるものです(民法774条、772条)。

イ.(○)「夫は、この出生後において、その嫡出であることを承認したときは、その否認権を失う。」(民法776条)。

ウ.(×)夫が長期間服役している場合には、その子には嫡出推定が及びません。親子関係不存在確認の訴えによります。

エ.(×)相続等利害関係が生ずる可能性があり、母と子のどちらか一方が死亡した後でも争うことができます。

オ.(○)そのとおりです。再婚禁止期間に婚姻届が受理された場合も婚姻は有効です。嫡出推定が重複する子が出生したときは、父を定める訴えによって判断することになります。今のご時世、DNA鑑定をすれば99.999%確実に判断できます。余談ですが、この世界には、母親の胎内で双子になりかけて結局一人の赤ちゃんが作られた等によって、体内に二種類のDNAを持って生まれてくる人間も存在しています。

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  1. より:

    第28問の肢ウは、702条3項ではないでしょうか。修理後に倒壊しているから現存利益がないよというふうな肢と解しましたがいかがでしょうか。

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