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平成30年司法試験-論文式試験民事系第3問(民事訴訟法)の分析と解説-設問1編

2018/09/24
 
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こんにちは。ゴンテです。出題趣旨を追記しつつ、平成30年司法試験の民事訴訟法の設問1をまとめてみたいと思います。

【設問1の問い】問題文→http://www.moj.go.jp/content/001258875.pdf

①重複訴訟の禁止に牴触しないか?交通事故加害者二人を共同被告とすることができるか?

➁被害者の住所地に不法行為に基づく損害賠償請求の管轄が認められるか?加害者二人を共同被告とすることができるか?

【設問1の事例整理】

Aが客として乗っているBの運転するタクシーとCの運転する自動車とが乙市内で交通事故を起こした。乗客Aは乙市内のD病院で応急処置を受けた。BC間では交通事故の過失割合について争いがあり、A-BC間では損害額について争いがある。そこで、BはAに対して本件事故に係る不法行為に基づく損害賠償債務が150万円を超えて存在しないことの確認を求めて乙地裁に提訴した。一方、Aとしては、400万円の損害賠償をBC側に請求したいと考えている。

【出題趣旨】

出題趣旨より引用“Bが既にAを被告として150万円を超える損害賠償債務の不存在確認の訴えを提起し,訴状がAに送達されて訴訟係属が生じていることとの関係で,AのBに対する訴えの適法性に関しては,民事訴訟法第142条の重複起訴禁止との関係を重複起訴禁止の趣旨を踏まえて論じなければならず,その前提として,Bの訴えの訴訟物を明示する必要がある。Bの訴えの訴訟物は,…本件事故に係るBのAに対する不法行為に基づく損害賠償債務のうち150万円を超える部分となり,AのBに対する400万円の支払請求の訴えのうち150万円を超える部分については,事件の同一性(当事者と訴訟物の同一性)が認められるので,重複起訴禁止との関係が問題となる。課題(1)では,…金銭債務不存在確認の訴えの被告は原告に対してその金銭の支払を求める反訴を提起することができ,これによると重複起訴の禁止の規定に抵触しないこと…を指摘することが求められる。”引用以上

【課題(1)前段の検討】

(民事訴訟法142条)「裁判所に係属する事件については、当事者は、更に訴えを提起することができない。」

(判断基準)訴訟が係属していることを前提に、当事者の同一性、訴訟物の同一性の観点から検討することになる。

(あてはめ)BのAに対する債務不存在確認訴訟の訴状副本等がAに送達されているので、訴訟が係属している。AがBに対して訴えを提起しようとしているので、当事者は同一である。BのAに対する訴えの訴訟物は、本件事故という不法行為に基づく損害賠償請求権のうち150万円を超える部分であり、一方、AのBに対する訴えの訴訟物は、同請求権のうち400万円までの部分となるから、150万円超から400万円以下の部分が重なり合っているため、訴訟物の同一性が認められる。→原則として、142条に牴触してAの訴えが却下されるはず。

(例外の検討)142条の趣旨は、被告の応訴の煩・訴訟不経済・矛盾判決の防止にある。AのBに対する訴えを反訴として行う場合には、142条の「更に訴えを提起すること」に当たらないため適法であるとする構成を取ることが考えられる。あるいは、判例百選にも載っている(最判平16.3.25)によれば、債務不存在確認の訴えに対して、給付の訴えを反訴提起した場合には、確認の利益が失われて債務不存在確認の訴えは却下となるから、142条の趣旨に反せず適法であるという構成もありえる。

【出題趣旨】

出題趣旨より引用“Aが,乙地裁において,CをBとの共同被告として損害賠償請求の訴えを適法に提起できることについては,共同訴訟の一般的要件(同法38条前段)を満たすことを指摘すべきであるのはもちろんこの反訴請求と併合して本訴原告以外の者であるCに対する請求に係る訴えを提起できるかを検討する必要がある。法が定めていない主観的追加的併合を認める問題を意識しつつ,それが許されるとの立論をすることが求められる。…”引用以上

【課題(1)後段の検討】

反訴原告A-反訴被告Bという構図からすると、Cを主観的追加的併合することができるか検討することになります。(最判昭62.7.17)は、訴訟係属後に第三者を被告に追加して1個の判決を得ようとする場合には、第三者に対する新訴を提起した上で、弁論の併合を裁判所に促す方法によるべきとして、主観的追加的併合に否定的な態度をとっています。理由としては、根拠条文がないこと・訴訟不経済、訴訟の複雑化、濫訴、訴訟遅延の各おそれがあることを挙げています。そうすると、確かに根拠条文はないものの、訴訟経済に適い、訴訟が複雑化せず、濫訴のおそれもなく、訴訟遅延のおそれもなければ適法だというように持っていけばよいことになりそうです。本問では、同一の事故から生じた債務であり、同一の訴訟で過失割合や損害額を確定することが合理的と言えます。よっt、主観的追加的併合によって、AがCを被告に加えることが適法であるという結論を示せばよいと思います。

【出題趣旨】

出題趣旨より引用“Aが甲地裁にBとCを共同被告とする訴えを提起する場合,Bの訴えに係る訴訟が係属する裁判所とは別の裁判所に提起する別訴であっても,これを適法と認めるべき必要性及び重複起訴の禁止の趣旨が妥当しないとする理由を示すことにより,Aの訴えが適法であることを述べることになる。債務不存在確認訴訟と給付訴訟とでは得られる判決の効果に違いがあること(給付判決には執行力が認められる),Aの訴えの訴訟物のうちBの訴えの訴訟物となっていない150万円については訴訟物の重なりがないこと,Bが自己に有利な管轄裁判所に消極的確認の訴えを提起することにより,Aが甲地裁で訴えを提起できるはずの地位を損なうこと,Bの訴えについて審理が進んでいる状態ではないことなどを考慮に入れて論ずることが期待される。

【課題(2)前段の検討】

Aを原告とし、BおよびCを被告とする裁判についての管轄が問題となります。民事訴訟法4条1項・2項では、原則として被告の住所地に管轄を認めていますが、Bは乙市在住なので、甲地裁に普通管轄は認められません。では、5条9号の不法行為管轄はどうかというと、交通事故発生地は乙市なので、やはり甲地裁に不法行為管轄は認められません。しかし、5条1号の財産権上の訴えにおける義務履行地管轄が認められます。不法行為に基づく損害賠償債務の弁済は、債権者の住所において行うことになるからです(民法484条)。

【課題(2)後段の検討】

原則として、重複訴訟の禁止に抵触することは、上述のとおりです。出題趣旨に沿って構成すると、給付訴訟には執行力があることから紛争の一回的解決が可能であるという指摘、訴訟物の重なり合いがない部分があることの指摘をしておきましょう。民事訴訟法7条・38条前段・5条1号より、本来であれば、AはBCに対して、甲地裁に訴えを提起できるはずで、本問では、BのAに対する訴えが先に乙地裁に係属していることだけをもって、重複訴訟の禁止に該当するとしてしまうのは、Aの訴権保護の視点と、保護されるべき不法行為の被害者が不利益を受ける結果になる不都合が生じ、妥当な結論とは言えません。また、先に係属した訴訟も第1回口頭弁論までしか審理が進んでいないから、142条の趣旨に反しない旨の指摘もすべきです。あと、一応、民事訴訟法17条「…当事者の…住所、…その他の事情を考慮して、…当事者の衡平を図るために必要があると認めるときは、…他の管轄裁判所に移送することができる。」とされていますので、BのAに対する確認訴訟が乙地裁に係属していたとしても、絶対的に乙地裁だけが裁判をするわけではないということも答案には書かなくてよいですが、付け加えておきたいと思います。

以上です。他の記事もご覧下さい。ゴンテ

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