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動産留保所有権者と動産収去義務の帰趨について最決平21.3.10(民集63-3-385)を考察する。

 
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こんにちは。ゴンテです。今回は、土地所有権者が自らの土地上に放置されている動産を収去請求できる相手方は誰か?という問題を考えていきたいと思います。この問題は、平成30年司法試験の民法設問2でも出題されました。

最高裁第三小法廷判決平成21年3月10日(民集63巻3号385頁)

【事案の整理】原告Xは、A氏に駐車枠を賃貸したが、駐車料金の未払いが続いたことから、契約を解除し、そこに停めてあったB車の撤去を求めることとした。B車は、実質的にA氏が販売店から購入して使用している物だが、代金を被告Y社が立替払しており、登録名義人はY社となっていた。AY間には、A氏が立替金債務を完済するまで所有権をY社に留保する特約や、返済を怠ったら期限の利益を喪失し、Y社がB車の引渡を受けて売却した上で残債務に充当できる旨の約定があった。

判決の整理

《弁済期が到来していない場合(A氏がY社へ返済を継続している場合)》留保所有権者Y社は、原告X所有の土地上にあるB車の撤去義務や不法行為責任を負わない(特段の事情のない限り)

《弁済期を経過した場合(A氏がY社への返済を怠っている場合)》留保所有権者Y社は、B車の撤去義務や不法行為責任を免れることができない(妨害の事実を知らされたときから不法行為責任を負う)。←もちろんA氏も担保権実行によってB車が売却されるまで、撤去義務や不法行為責任を負うという意味でしょう。

判決の理由付け

留保所有権は、担保権の性質を有し、残債務の弁済期が到来するまでは、当該動産の交換価値を把握するにとどまるが、弁済期が経過すれば、当該動産を占有・処分する権能を有することになるから。←動産を占有・処分できる権限を有するのが誰なのかを冷静に考えれば、試験問題で問われても大きなミスはしなくて済みそうですね。

最高裁お決まりの「特段の事情のない限り」について考えてみる

もしあなたが土地所有者Xだとして、自分の土地に自動車が放置されていたら、警察に名義人への撤去連絡をしてもらうか、陸運局で手続を踏んでナンバー照会して名義人に連絡することでしょう。自動車を登録したことのある方ならお分かりかと思いますが、自動車の「所有者」と「使用者」別々の欄になっているんですよね。つまり、留保所有権者と留保買主は別々に登録できるので、まずは「使用者」に撤去を要請ないし請求できるはずで、無闇やたらに留保買主の覚知困難性だけを重要視して、特段の事情があると安易に言ってしまうのは、何だか違う気がします。動産の占有・処分権限がまだない段階の留保所有権者に撤去義務等を負わせるには、別の理由付けも必要だと考えます。そこで、平成6年の最高裁決定を参照してみます。

以下更新中…

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